税務会計これでいいですか?

税務会計の参考になれば幸いです

はじめに

はじめまして。

税務会計ぴよと申します。

私は、国税局に10年勤務していました。

国税局では、査察部の情報収集部門に勤務して、主に法人税法違反や所得税法違反の嫌疑者についての脱税情報を日々収集していました。

税務署勤務時代では、法人税の調査部門で100社を超える法人の税務調査を実施しました。

 

国税局や税務署に勤務して感じたことは、税務会計は納税者に対して複雑怪奇すぎるため、税法やその解釈、会計処理方法が、納税者に浸透していないことです。

税法は、たしかに一見すると難解ではありますが、理解する上でのコツを掴んでしまえば、決して遠い存在ではありません。

 

このブログを通して、税務会計についての知識をお伝えして、一人でも多くの方が自ら考え税務会計処理できるようになれば幸いです。

電子マネーでの経費計上

今ではコンビニをはじめ、ほとんどのお店で電子マネーを利用することが出来ます。

私は個人的に交通系ICを利用しています。

今回は、電子マネーで経費を計上する方法と工夫についてご紹介したいと思います。

 

以下では、交通系ICを利用した場合で書いていきます。

まず、交通系ICに10,000円をチャージした時、経費として何か計上できるのでしょうか?

この時点では、何も経費計上できません。

現金10,000円が、交通系IC残高10,000円に姿を変えただけです。

 

実際に電車やバスに乗って運賃を支払ったタイミングではじめて旅費交通費として計上します。

 

時々、交通系ICに10,000円をチャージした時点で旅費交通費10,000円を経費計上している会社さんを見かけますが、適切な処理とは言えません。さらに、消費税の課税仕入として処理している場合もありますが、誤った処理です。

消費税は、名前のとおり何かを消費した時、つまり取引があった時に発生しますので、チャージした段階では消費税は課税されません。

 

実務上、上記の様に処理するのが現実的だという意見もあると思いますが、上記のような経理処理だと結果的に正確な経費計上が出来なくなります。

 

電車やバスを業務で頻繁に使用するのであれば、週に1度は明細を発行しましょう。駅の券売機から発行することができます。

消耗品を購入した際には、レシートに電子マネーで購入したと記載しましょう。

 

結局、現金で購入して経費計上する場合と同じ事です。現金なのか電子マネーなのかの違いなだけで、丹念に記録を残すことが大前提なのです。

 

電子マネーを活用する際には、プライベート用と事業用とに分けることをオススメします。

つまり、交通系ICなら、カードを2枚所有するのです。事業用は事業用と最初から決めておけば、あとから明細を確認した時にプライベートとして使用したのか判断に迷わずに済みます。

これは、クレジットカードにも言えることですね。

ATM防犯カメラからの調査

金融機関のATMには、防犯カメラが備わっています。一度、ATM操作をする際によく見てみてください。半円型のカメラが目線より少し低い位置に設置されています。

 

借用口座。

世の中には、他人名義の口座を何らかの方法で入手して利用している者がいます。

なお、この借用口座を利用することは犯罪です。犯罪収益移転防止法により1年以内の懲役、100万円以下の罰金またはその両方が科せられます。

 

それでも、利用する者がいます。

その理由は様々で、口座を作ることが出来ないため、資金洗浄のため、脱税のため…等々。

私は今まで脱税のために借用口座を利用していた者を何人も見つけてきました。借用口座を使ってどう脱税するのかについてはまたの機会に書きたいと思いますが、冒頭に出てきたATM備え付けの防犯カメラが、借用口座の摘発に効果的です。

 

税務署は、ATMの防犯カメラデータを確認しています。カメラ画像から借用口座であると判断できた時、ほぼ間違いなく税務調査に着手します。そして場合によっては査察部も動き出します。

飲食店の税務調査①

飲食店に対する税務調査は、基本的に予告なしの抜き打ちで実施されます。

おそらく、ほとんどの経営者が突然の訪問に狼狽してしまうと思いますが、どのようにして税務調査が実施されるのかを知っておけば、少しは不安を解消できると思いますので、飲食店に対する税務調査について何回かに分けて書いていこうと思います。

 

1 調査官がやって来る時間帯

お店の営業時間によって変わりますが、もし夕方から深夜まで営業するお店であれば、調査官は朝の10時から12時頃にやって来ることが多いです。この時間帯であれば、経営者は目を覚ましていると判断します。

例外もあります。例えば、経営者が店に立つことなく、オーナーのような位置付けの場合、調査官は朝8時から9時頃にやって来ることもあります。

 

2 調査官はどこに来るのか

ずばり、納税地です。納税地が事務所でなく、自宅の場合、自宅にやって来ることになります。そして、納税地である自宅と事務所と店舗が分かれている場合、この全てに調査官は手分けして訪問して来ます。

納税地の自宅で経営者に接触できないなら、事務所を当たってみて、事務所でも接触できないなら、店舗に臨場を試みます。そして、どの場所でも経営者に会えなかった場合、自宅にいるご家族や事務所や店舗にいる従業員を通して、経営者に電話をかけてきます。

とにかく、調査官は経営者に接触したいのです。

 

3 調査官はまず何をしてくるのか

調査官は、まず法令に基づく、実地調査の事前通知を経営者にします。この事前通知とは、改めて誰が、誰に対して、どの税目の調査を、どの期間分実施するのかを宣言することです。

これが済んだら、調査官は経営者に事業の概況について質問を開始します。

 

 

次回以降、調査官は具体的に何を質問して、何を調べるのかについて記していきたいと思います。

推計課税

推計課税とは、取引に係る資料等に拠らず、売上金額や売上計上もれ金額を推計した結果、所得金額を算出する方法です。

 

具体例の1つに、

飲食店で、ある日1万円の売上計上もれが発覚した場合、1日1万円×365日(営業日)分の売上計上もれが1事業年度にあると推計します。年間365万円の売上計上もれがあるだろうということです。

 

個人的には、推計課税には甚だ疑問です。

売上や売上計上もれの金額は、やはり売上の根拠となる書類の存在、計上もれの事実をもって算出されるべきです。

 

もしも、税務署から売上推計の間接的な根拠(飲食店なら例えば使用したおしぼりの数量)、計上漏れの事実(例えば社長や事業主から従業員に対して1日1万円を売上からマイナスしろという指示のメール)を突きつけられたなら、推計課税による修正申告の作成提出をしても構いませんが、そういった根拠や事実が無いにも関わらず、勢いで修正申告を勧奨してきたなら、応じる義務も義理も一切ありません。

 

税務署は、更正処分する事ができませんので、その内諦めてくれます。

消費税の見落としがちな不課税取引

私が税務調査官だった頃に、帳簿調査で消費税の課税取引と非課税不課税取引の処理を確認する際、細かいと思いますが次の項目を狙い撃ちしていました。

 

1 ゴルフ場利用税(不課税)

ゴルフプレー料金の内訳を見ると数百円から千円強のゴルフ場利用税が記載されています。

経理上、ゴルフ代は交際費として費用計上して消費税は課税取引と処理しますが、注意点としてゴルフ場利用税だけは不課税として処理しなければなりません。

 

2 入湯税(不課税)

温泉に入った際に課税される入湯税も消費税上は不課税のため、入湯税の額だけ取り出して不課税処理しなければなりません。

温泉旅行に社員や取引先と行くかもしれませんが、頻度が少ないため入湯税の存在を忘れがちです。

 

3 軽油引取税(不課税)

建設業の方だとディーゼル車を所有している事があり、軽油を給油した際のレシートをよく見ると「内軽油税」と記載があります。

この軽油引取税も消費税上、不課税処理しないといけません。

 

以上の点を指摘した際、素直に非を認める税理士がいた一方で、こんな細かい事良いじゃないですかと開き直る税理士もいました。

クライアントの前でよくそんな発言ができるものだなと呆れた記憶があります。

たしかに細かいです。特にゴルフ場利用税は頻度としては少なくない時がありますが、手間がかかっても適正な処理をしたいところです。

無申告の時に税務調査が来たら

経理や税務の知識に乏しく、本業が忙しくて開業や法人設立以来、確定申告をしていないという事業者が意外と多くいます。

 

そして税務署は5年ほど泳がせてから、予告無しで税務調査を実施します。

ある朝、インターホンが鳴ったら税務署の人間が玄関ドアの向こうに立っているのです。

関与税理士はいません。誰にも助けを求めることはできません。

 

この時、一体どう対処すればいいでしょうか。

 

まずは、税務署に協力的な態度を見せましょう。書類が見たいと言えば、拒むことなく素直に見せましょう。借用したいと言ってきた場合、経費に係る資料を漏れなく渡しましょう。

後出しで経費関連の資料を提出しても認めてもらえない可能性があります。

そのために日頃から書類整理はしっかりやっておきましょう。

 

税務署は無申告重加算税を賦課したいはずです。このため、何故今まで申告してこなかったのかと詳しく聞いてくることでしょう。この時、決して誘導尋問には乗らないようにしましょう。「自由に使えるお金が欲しかった」「申告することで税金を納めたくなかった」「申告しないといけないと分かっていたが、やり過ごせると思っていた」

これらの文言やこれに近い発言は決してしてはいけません。

 

そして、税務署は質問応答記録書という調書を作成した上で、署名を求めてきますが、もし調書に少しでも自分が発言していない内容があったら絶対に署名はしないで下さい。

署名をしたら最後だと思って下さい。

自分が発言していない事が書かれた調書であった場合、「税務署はこんな架空の調書を作るのですか?それならもう調書には今後一切署名おろか確認すらしません」と牽制しても構いません。

 

税務調査には、調査を受ける受忍義務がありますが、調書に署名する義務は一切ありません。

この調書は、税務署が後々裁判沙汰になった際の裁判に勝つための証拠書類なのです。つまり、調査の進行自体には必要のない書類であって、いつか起こるかもしれない裁判のための書類をこの段階で作成しているだけなのです。

 

この無申告の時の税務調査については、もっと書きたいことがありますので、またの機会にします。